屋根塗装で「縁切り(えんきり)」が省かれると、塗り替えたばかりの屋根から雨漏りが起きることがあります。縁切りとは、塗料でふさがれた屋根材の隙間を開け直し、雨水の逃げ道を確保する作業のこと。平板スレート屋根の塗り替えでは欠かせない工程です。この記事では、縁切りが必要な理由、専用部材「タスペーサー」を使う工法との違い、見積書での確認方法、手抜きを防ぐチェックポイントまでをまとめて解説します。
縁切りとは?塗膜でふさがれた屋根の隙間を開け直す作業
縁切り部材「タスペーサー」を開発・販売する株式会社セイムの公式サイトによると、縁切りは「屋根材の重なり部分で硬化した塗膜を除去し、水の通り道を確保する作業」と説明されています。
同社の解説では、新築時の平板スレート屋根は屋根材の上下の重なり部分に4mmほどの隙間があり、この隙間が雨水の排出と屋根材裏面の通気を担っています。ところが塗り替えの際、ローラーで塗った塗料がこの隙間に入り込んで固まると、水の通り道がふさがれてしまいます。塗装後にその隙間を開け直すのが縁切りです。
縁切りをしないとどうなる?雨漏りと下地の腐食
毛細管現象で雨水が屋根材の裏側へ回る
隙間がふさがると、屋根材の縦目地から入った雨水が重なり部分から排出できなくなります。行き場を失った水は毛細管現象で屋根材の裏側に染み込み、屋根下地の木材の腐朽や雨漏りの原因になると同社は説明しています。
不具合が出るまでに時間差がある
厄介なのは、縁切り不足の影響がすぐには表面化しない点です。塗装直後は見た目がきれいなので気づかず、数年後に室内のシミや天井裏の湿気として現れることがあります。そのころには保証期間が切れていたり、業者と連絡が取りづらくなっていたりすることも少なくありません。だからこそ、工事中に工程を確認しておくことが大切です。
縁切りが必要な屋根・不要な屋根
- 必要になりやすい:平板スレート屋根(カラーベスト・コロニアルなどと呼ばれる薄い板状の屋根材)の塗り替え
- 基本的に不要:瓦屋根、金属屋根(ガルバリウム鋼板など)。重なり構造が異なり、塗膜で排水経路がふさがる問題が起きにくいためです
- 判断が分かれる:屋根の勾配が急で水が滞留しにくい場合や、屋根材が反って十分な隙間が残っている場合。ただし現場を見なければ判断できないため、業者に理由を説明してもらいましょう
自宅の屋根材が何かわからないときは、点検時に写真を撮ってもらい、屋根材の種類を確認するところから始めると話が早く進みます。屋根と外壁を同時に塗る場合の考え方は屋根と外壁の同時塗装のメリットと費用も参考になります。
従来の縁切りとタスペーサー工法の違い
縁切りには、塗装後にカッターや皮スキで塗膜を切る従来のやり方と、塗装前に専用部材を差し込んでおくタスペーサー工法があります。
| カッター・皮スキ | タスペーサー工法 | |
|---|---|---|
| 作業のタイミング | 塗装完了後 | 下塗り後・上塗り前 |
| 屋根に上る回数 | 塗装後にもう一度上る | 塗装工程の中で完結 |
| 主な懸念 | 塗膜を完全に除去しづらい/屋根材を傷めることがある | 屋根材の状態によっては設置できない場合がある |
セイムの公式サイトでは、従来の皮スキによる縁切りについて「一般的な平板スレート屋根の場合で、2人がかりで1日作業」になると説明されています。また、塗装翌日に作業しても屋根材裏面の塗料が乾ききっておらず、後日また密着してしまう場合があるとも記載されています。タスペーサーには01と02の2種類があり、同社は全国約70万棟での採用実績を挙げています。
※記載の内容は2026年9月時点で株式会社セイムの公式サイトに掲載されていたものです。採用実績は2020年7月現在・1棟あたり700〜800個使用での試算とされています。最新の情報は公式サイトでご確認ください。
見積書で確認すべき3つのポイント
- 「縁切り」または「タスペーサー」の項目があるか。項目が見当たらない場合、工程そのものが省かれている可能性があります。
- 単価と数量が書かれているか。「屋根塗装一式」にまとめられていると、実際に施工されたか後から確認できません。見積書の読み方はリフォーム見積書の見方で詳しく解説しています。
- 不要と判断した理由が説明されるか。屋根材の種類や勾配など、根拠のある説明があるかどうかが判断材料になります。
費用の目安としては、タスペーサーの設置はおおむね1㎡あたり数百円程度、屋根全体で数万円の範囲に収まることが多いとされています。※金額は一般的な目安です。実際の費用は施工内容・屋根の面積・地域・業者により異なります。
複数社の見積書を並べると、この工程の扱いの差がはっきり見えてきます。外壁塗装の一括見積もり比較を使えば、同じ条件で各社の内訳を比べられます。工程全体の見方は外壁塗装の下地処理と高圧洗浄もあわせてどうぞ。
まとめ
縁切りは、平板スレート屋根の塗り替えで雨水の通り道を守るための工程です。省かれても仕上がりは変わらないため施主が気づきにくく、数年後の雨漏りとして表面化することがあります。見積書に工程が明記されているか、単価と数量が書かれているか、不要とする場合はその理由が説明されるか——この3点を確認するだけで、リスクは大きく下げられます。
よくある質問
縁切りは追加料金になりますか?
業者によって扱いが異なり、屋根塗装の基本工程に含めている場合と、別項目で計上する場合があります。どちらでも構いませんが、見積書のどこに含まれているかは確認しておきましょう。含まれていないまま契約すると、後から追加請求になることがあります。
タスペーサーは必ず使わなければいけませんか?
必須の部材ではありません。カッターや皮スキによる従来の縁切りでも、適切に行われていれば水の通り道は確保できます。重要なのは工法の名前ではなく、隙間が確保されているかどうかです。
工事が終わったあとで縁切りができているか確認できますか?
屋根に上がるのは危険なので、施主自身が確認するのは避けてください。多くの業者は工程写真を撮っているため、契約前に「縁切りの施工写真をもらえますか」と伝えておくのが確実です。
屋根が反っていて隙間があるように見えます。それでも必要ですか?
見た目だけでは判断できません。塗装によって隙間が埋まる箇所は屋根全体に分散しているため、一部に隙間が残っていても不十分な場合があります。現地調査で屋根材の状態を見てもらったうえで判断してもらいましょう。



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